「障がいのある子どもの将来、どうなるんだろう」
この不安を抱える家族は少なくありません。私も同じ思いを抱えていた一人です。でも、鴨宮エリアにある障がい者作業所との出会いが、私たち家族の考え方を大きく変えてくれました。
就労継続支援B型や障がい者グループホームという言葉を聞いても、実際どんな場所なのか想像できない方も多いのではないでしょうか。私も最初は「作業所ってどんな場所？」「うちの子に合うかな？」と不安だらけでした。
この記事では、鴨宮の障がい者作業所「セブンカラーズ」を実際に利用して感じた変化や、見学して初めて分かった現場の工夫、そして何より障がいのある方々が生き生きと活躍できる環境がどのように作られているのかをお伝えします。
障がいがあっても、その人らしく働き、暮らせる社会。それは決して夢物語ではありません。鴨宮の作業所から見えてきた共生社会のヒントを、ぜひ一緒に探っていきましょう。
神奈川県小田原市鴨宮エリアに点在する障がい者作業所は、地域社会に新しい「働く」の形を提示しています。従来の効率性や生産性だけを重視する労働観から一歩踏み出し、一人ひとりの個性と能力を最大限に活かす場づくりに成功しているのです。特に注目すべきは「わくわく広場」や「ぽけっと」などの作業所が実践する、利用者の特性に合わせた柔軟な仕事設計です。例えば、細かい作業が得意な方はハンドメイド製品の製作、コミュニケーションが好きな方は地域のマルシェでの販売担当というように、それぞれの強みを活かせるポジションを創出しています。また、これらの作業所では「できないこと」ではなく「できること」にフォーカスした支援が行われており、この視点の転換が利用者の自信と働きがいにつながっています。地元企業との連携も特徴的で、小田原駅周辺の飲食店への納品や、地域イベントでの出店など、地域社会との接点を積極的に増やす取り組みは、障がい者の社会参加と理解促進に大きく貢献しています。誰もが自分らしく働ける社会づくりのヒントが、鴨宮の作業所には詰まっているのです。
鴨宮エリアでは、ここ数年で障がい者支援の取り組みが着実に広がっています。地域に根差した作業所が次々と開設され、それぞれが特色ある活動を展開しているのです。実際に複数の施設を見学してみると、単なる「福祉施設」というイメージを超えた場所であることに気づかされます。
例えば、JR鴨宮駅から徒歩10分ほどの場所にある「ワークショップひまわり」では、手作り雑貨の製作に力を入れています。利用者さんたちが一針一針丁寧に刺繍を施したポーチは、地元の商店街でも人気商品に。「ただ作るだけでなく、お客様の反応を直接感じられることが大切」と施設長の方は話します。
また、国道1号線沿いにある「みらいワークス鴨宮」では、企業からの下請け作業を中心に、段ボール組立や部品の組み立てなど、実践的な就労訓練を行っています。見学時に印象的だったのは、作業スペースの効率的なレイアウト。「一人ひとりの得意不得意に合わせた環境づくりが重要」と支援員の方が教えてくれました。
鴨宮地区社会福祉協議会が運営する「かもみやスマイルプロジェクト」では、地域住民と障がいのある方々の交流イベントを定期開催。障がいへの理解を深めるワークショップや、一緒に楽しむ料理教室など、自然な形での共生を目指した取り組みが印象的でした。
見学を通じて最も感じたのは、「支援する側・される側」という一方通行の関係ではなく、お互いが学び合い、支え合う双方向の関係が築かれていることです。作業所で生まれた製品やサービスが地域に還元され、その対価が適切に評価される―そんな健全な循環が鴨宮エリアでは少しずつ形になっています。
障がい者支援の輪は、施設の中だけにとどまりません。地元の小田原市内の企業約15社が障がい者雇用に積極的に取り組み、作業所との連携も進んでいます。特に神奈川県の「共生社会実現プロジェクト」の一環として、鴨宮エリアは先進的なモデル地区として注目を集めているのです。
実際に足を運んでみると、理念や制度だけでは見えてこない、人と人とのつながりの温かさを感じることができます。鴨宮から広がるこの支援の輪は、私たち一人ひとりが参加できる共生社会への具体的なヒントを示しているのかもしれません。
「子どもが大人になったとき、この社会でどう生きていけるのだろう」
障害のあるお子さんを持つ親御さんの多くが抱える不安です。日常の支援に加え、将来への漠然とした不安を抱え続けることは、家族にとって大きな心理的負担となります。
鴨宮エリアの障害者作業所「あおぞら工房」に通う佐藤さん（仮名）の母親はこう語ります。「息子が18歳になったとき、学校を卒業した後の進路に本当に悩みました。家で一日中過ごすことになるのではないかと、夜も眠れないほど心配していました」
しかし、あおぞら工房との出会いが家族の心境を大きく変えました。
「最初は半信半疑でした。でも息子が作業所に通い始めてから、自分から『今日はこんな仕事をしたよ』と話すようになったんです。何より表情が明るくなりました」
作業所での取り組みは、利用者だけでなく家族の生活も変化させます。定期的に開催される家族会では、同じ悩みを持つ親同士が情報交換や相談ができる場となっています。
「同じ立場の方と話せることが、どれだけ心の支えになるか。もう一人で抱え込まなくていいんだと思えました」と佐藤さんの母親。
神奈川県小田原市の福祉支援センター職員は「作業所が地域にあることで、障害のある方の居場所だけでなく、家族の安心も生まれます。支援の輪が広がることで、家族全体のQOL(生活の質)向上につながっています」と説明します。
実際に、鴨宮エリアの作業所では、利用者が製作した商品の販売イベントや地域清掃活動など、地域との交流の機会も多く設けています。このような活動が、家族にとって「我が子の社会での居場所」を目に見える形で実感できる機会となっています。
「今では息子の将来に希望が持てるようになりました。完全に不安がなくなったわけではないけれど、一歩ずつ前に進んでいける。それが何より大きな変化です」
障害者作業所は単なる「日中活動の場」ではなく、家族も含めた支援の拠点として機能しています。親の高齢化による「親亡き後問題」も含め、生涯にわたる支援体制の一翼を担う重要な社会資源なのです。
小田原市では現在、障害者就労支援に関するネットワーク強化と、作業所と企業を結ぶ橋渡し役となるコーディネーターの育成にも力を入れています。こうした取り組みが、障害のある方とその家族の不安を少しずつ希望に変えています。
「できないこと」ではなく「できること」に焦点を当てた就労支援が鴨宮エリアで広がりを見せています。地域に根差した作業所では、一人ひとりの個性や特性を活かした仕事の場が創出され、障がいのある方々が生き生きと働く姿が見られます。
鴨宮駅から徒歩10分ほどの場所にある「ワークショップ・フレンズ」では、パン作りを中心とした活動を展開。ここで働く利用者さんの多くは、以前は「就労は難しい」と言われていた方々。しかし、工程を細分化し、一人ひとりの得意なことを見つけ出す支援によって、商品の品質は地元で高い評価を受けています。
また、IT関連の作業に特化した「デジタルワークス鴨宮」では、データ入力やウェブサイトの更新作業など、集中力を要する業務を請け負っています。自閉症スペクトラムの特性がある方が、その正確さと集中力を発揮して重要な役割を担っているのです。
「最初は不安でしたが、今は毎日が充実しています」と話すのは、5年間作業所で働いているAさん。彼の言葉からは、「働く」ということが単なる経済活動ではなく、社会とのつながりや自己実現の場となっていることが伝わってきます。
鴨宮の作業所では、障がいの種類や程度によって一律に仕事を割り当てるのではなく、個々の特性に合わせた環境づくりを重視。例えば、感覚過敏のある方には音や光の刺激が少ない空間で作業できるよう配慮し、コミュニケーションが苦手な方には視覚的な指示書を用意するなど、きめ細やかな工夫が随所に見られます。
さらに注目すべきは、地域社会との連携です。小田原市の「共生社会推進プロジェクト」との協働により、作業所の製品を地元企業や商店街で販売する機会が増え、障がいのある方々の社会参加の幅が広がっています。特に駅前の「鴨宮マルシェ」での定期的な出店は、地域住民との自然な交流の場となっています。
企業側にも変化が見られます。神奈川県の障がい者雇用促進事業を活用し、作業所からのステップアップとして一般企業への就労を実現した事例も増加中。株式会社小田原機械工業では、作業所での経験を活かした業務設計により、複数の障がい者雇用に成功しています。
「できない理由を探すのではなく、できる方法を一緒に考える」という支援者の言葉が印象的です。鴨宮の作業所から広がる波紋は、障がいの有無に関わらず、誰もが自分らしく働ける社会の可能性を示しています。
鴨宮エリアにある障がい者作業所を訪問する機会を得た。「あおぞら作業所」は小田原市鴨宮にあり、地域に根差した活動を続けている施設だ。実際に1日体験として利用者さんと同じ作業を経験したところ、多くの発見があった。
作業所では「できる」を増やす仕組みづくりが徹底していた。例えば、箱折り作業では工程を8段階に細分化。それぞれの利用者さんが得意な工程を担当することで、全体として高品質の製品を作り上げていく。一人ひとりの「できること」を最大化する工夫だ。
特に印象的だったのは作業環境の整備。机の高さは利用者さん一人ひとりに合わせて調整され、作業手順は写真付きのカードで視覚的に理解できるよう工夫されていた。音や光の刺激も最小限に抑えられており、集中しやすい環境が整えられていた。
利用者さんとの会話から見えてきたのは「できた！」という成功体験の積み重ねの大切さ。Aさん(30代)は「最初はうまくできなかった紙袋作りも、今では一日50個作れるようになりました」と誇らしげに語ってくれた。支援員の方いわく「できる」経験が自信につながり、次の挑戦への原動力になるという。
作業所長の田中さんは「支援する側とされる側という区別ではなく、互いに学び合う関係づくりを大切にしています」と語る。実際、私も作業を通じて細かな作業の集中力や、コミュニケーションの取り方など多くのことを学んだ。
鴨宮の作業所では、個人の特性を活かす工夫と環境整備、そして成功体験の積み重ねが、利用者さんの「できる」を増やしていた。これは障がい者支援の場だけでなく、あらゆる職場や学校、社会全体に活かせるヒントではないだろうか。誰もが自分らしく能力を発揮できる社会づくりのモデルケースとして、鴨宮の作業所の取り組みは大きな示唆を与えてくれる。
