障がいという言葉を聞いたとき、多くの人が「できないこと」「制限されること」といった印象を持つかもしれません。でも、現場にいるとまったく違う景色が見えてきます。
それは、「障がいは“個性”であり、“力”にもなる」ということ。
今回は、海と山に囲まれた自然豊かな地域にある、とある作業所をモデルに、障がいを“個性”として活かす現場のリアルを紹介します。暮らしと仕事がゆるやかにつながるその日々には、「共に生きる社会」のヒントがたくさん詰まっています。
まずは基本から。障がいのある方が通う「作業所」とは、就労継続支援と呼ばれる福祉サービスのひとつです。
A型:雇用契約を結び、一定の給与を得ながら働く場所。出勤管理や業務の責任など、より“就職に近い”支援が行われます。
B型:雇用契約は結ばず、作業内容や時間が柔軟に調整されます。働くことが初めての方や、生活リズムを整えることが目的の方も多くいます。
どちらも「働くことで社会とつながる」ことが目的。作業内容は封入・清掃・農作業・軽作業・クラフト制作などさまざまです。
ある作業所の1日は、驚くほど多彩な動きにあふれています。
指先の器用さを活かして、封筒にシールを貼る人
コミュニケーション上手で、お客さんに商品を渡す役を担う人
植物が好きで、毎朝花壇の手入れをする人
パソコンが得意で、データ入力やデザインを担当する人
得意なこと、苦手なこと、好きなこと、こだわりがあること。
それらが「活かされる場所」であることが、作業所の最大の強みです。
ここでは、誰かの「できないこと」を責めたり、無理に合わせることはしません。
逆に、「あの人はそれが得意だからお願いしよう」という発想が自然と生まれるのです。
作業所で働く人たちは、いわゆる“普通”の働き方には馴染みにくいかもしれません。けれどもそれは、「別の可能性を持っている」ということ。
例えば…
決まった手順を正確に繰り返すのが得意な人
静かな環境でこそ集中力を発揮する人
少しずつ進歩することで力をつけていく人
それらは一般の職場では見過ごされがちな「強み」です。
「障がいがあるからできない」ではなく、
「こういうやり方なら力を発揮できる」という考え方が根づいている場所。
それが、この地域の作業所の魅力です。
作業所で働くスタッフは、利用者の“サポーター”というより“伴走者”です。
教えすぎず、放っておかず。
うまくできないときは、一緒に手順を考え直す。
やる気が出ないときは、まず話を聞くところから始める。
「この人ならこうしたら動けるかも」
「今日はここまでできたらOKにしよう」
そんなふうに、ひとりひとりに合った“歩幅”でサポートするのが支援のコツ。
決してマニュアル通りではありません。人の数だけ支援の形があります。
作業所での活動は、地域との連携の中でどんどん広がっています。
地元商店と連携して商品の袋詰めやシール貼りを担当
マルシェやイベントでの自主製品販売
公園の清掃や花壇の手入れなど、地域貢献活動
「ありがとう」と言ってもらえる体験、
自分の作ったものが売れる体験、
誰かの役に立っているという実感。
それらが、「社会とつながっている」という確かな感覚をもたらします。
支援を受ける側、ではなく、“地域の一員”として過ごす日常がここにあります。
最近では、作業所自身がSNSやブログなどを通じて活動の様子を発信する動きも増えています。
作った製品の紹介
日々の活動報告
利用者の作品や思いの共有
こうした発信を通して、「見えにくかった障がい者の仕事や生活」が、少しずつ社会に届いていきます。
情報発信は、世の中への「わたしたち、ここにいます!」という宣言でもあります。
そして、共感や応援が集まることで、当事者にも大きな自信が育っていくのです。
多様性という言葉がよく使われるようになった今、
本当にそれが「力」になるためには、受け入れるだけでは足りません。
“多様性が活きる”環境をつくること。
そしてそれを“発信”していくこと。
作業所の役割は、単なる就労訓練にとどまりません。
「こんなふうに、ひとりひとりが輝ける社会もあるんだよ」と、
地域や社会にメッセージを送り続ける、いわば福祉のアンテナでもあるのです。
世の中にはまだ、「障がい=大変なこと」というイメージがあります。
でも、実際の現場はちがいます。
障がいのある人の中にこそ、
粘り強さ、観察力、創造性、優しさ、
たくさんの“強み”が眠っています。
作業所という小さな場所で、それらの力が少しずつ花開いています。
それは社会の可能性を広げる“発信”にほかなりません。
「障害を個性に」――それはただのスローガンではありません。
日々の現場の積み重ねが、それを現実のものにしています。
小田原のような自然と人がゆるやかにつながる地域だからこそ、
おだやかに、ていねいに、「その人らしい働き方」を育むことができるのかもしれません。
誰かと同じじゃなくていい。
できないことがあっても、自分の持ち味はきっとある。
そんなメッセージが、今日も作業所から社会に向けて発信されています。
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障がいを持つ方と社会をつなぐ“かけ橋”となり、一般社会の中で活躍するための継続的な支援を実施しています。