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海と山に囲まれた小田原で見つける障害者の才能

神奈川県の西の端にある小田原。海の香りがする駅前、梅やみかんが育つ山あい、のんびりした空気の中に歴史の香りも漂う町です。

この自然豊かなまちでは、障害のある人たちが、それぞれの“得意”や“好き”を活かしながら、暮らしの中でいきいきと才能を発揮しています。

「障害がある=できない」ではなく、「こんなことができるんだ!」という驚きや発見が、あちこちにあるのが小田原の魅力。この記事では、そんな才能がどのように見つけられ、伸ばされているのかを紹介していきます。


一人ひとりの「好き」から始まる

障害のある人の才能って、特別なものばかりじゃありません。むしろ日常の中に、きらりと光る何かがあることが多いのです。

たとえば、絵を描くのが大好きな人。細かい模様や色使いがとてもユニークで、誰にも真似できない作品が次々に生まれます。

手先が器用な人は、紙を使って折り紙や切り絵をつくったり、布を縫って小物を作ったり。作業はとても集中力がいて大変ですが、「黙々と続けることが苦じゃない」人にとっては、むしろ楽しい時間です。

料理が好きな人は、グループでの食事づくりに力を発揮したり、クッキーやパンを作って販売したり。ちょっとした「好き」や「得意」が、だれかの役に立つ形になることもあります。

小田原では、こうした日常の延長線上にある「才能」を丁寧に見つけて、少しずつ広げていく支援がされています。


作業所は“ちいさな工房”

町のあちこちにある作業所では、さまざまな活動が行われています。といっても、無理やり何かをやらせるのではなく、「できること」「やってみたいこと」から始めるのが基本です。

たとえば手作りのキャンドルや石けんを作るところ、野菜や花を育てるところ、地元の食材を使ったお菓子をつくっているところなど。まるで“ちいさな工房”が町の中に点在しているような感じです。

その中で、誰かが「この人の作るクッキー、美味しいよね」「このイラスト、ポストカードにしたら?」といった声をかけることで、新しい可能性が開かれることも。

地域のお店やイベントに出店する機会もあり、自分が作ったものを誰かが買ってくれたり、褒めてくれたりする体験が、また次へのやる気につながっていきます。


自然の力も後押しに

小田原は、海と山に囲まれた自然の豊かな土地です。この自然環境そのものが、障害のある人たちの才能を引き出す舞台になっています。

たとえば、畑作業や果物の収穫などは、体を動かすことが得意な人にぴったり。土に触れ、風を感じ、季節の変化を肌で感じながらの作業は、気分転換にもなり、精神的にも落ち着く時間になることが多いのです。

また、海の近くで貝殻や流木を拾って、それを使ったアート作品をつくるといった活動もあります。地元の素材を使って、世界に一つだけの作品を生み出すことも、小田原ならではの魅力です。

自然とのふれあいの中で、人との比較ではなく“自分のペース”で取り組めることが、安心感や自信へとつながっていくのです。


支援する人のまなざし

才能を引き出すうえで欠かせないのが、支援者のまなざしです。ただ「できることを見つけてあげる」のではなく、「一緒に見つけていく」「待つ」ことが求められます。

最初は何に興味があるのかもわからない。何をしてもピンとこないこともある。だけど、日々の関わりの中でポツリとこぼした言葉、ふと手に取ったもの、何気なく続けている行動――そんな小さなサインを大事にして、「これ、好きなのかもね」と気づいていく。

支援者が焦らず、その人のペースを大事にしながら「いいところ」を見つけようとする姿勢が、才能を咲かせる土壌になるのです。


地域とのつながりで広がるチャンス

小田原では、障害のある人たちの作品や商品を、地域のお店やイベントで販売する機会が少しずつ増えています。

たとえば、地元のマルシェで自分たちの焼き菓子を並べたり、ギャラリーで作品を展示してもらったり。直接お客さんと関われる体験は、自分のやっていることが誰かに届いているという実感を与えてくれます。

また、「こんなこと一緒にできないかな?」と声をかけてくれる地元の人たちもいて、コラボ企画が生まれることもあります。

地域の理解と応援が、障害のある人の才能を社会の中で花開かせる大きな力になっているのです。


それぞれの「らしさ」がある町へ

誰にだって「得意」や「好き」はあります。そして、それは障害のある・なしに関係ありません。

小田原という町が少しずつ育てているのは、「その人らしさを大切にする社会」です。「誰かの真似をしなくてもいい」「比べなくていい」――そんな空気の中で、一人ひとりの個性や才能が、少しずつ形になっていきます。

大きなことをしなくてもいい。特別なことができなくてもいい。でも、「これが私のやりたいこと」「これなら自分にもできるかも」と思える何かを、見つけて、続けていける。

そんな場所が、自然と暮らしが寄り添う小田原には、ちゃんとあります。


おわりに

障害のある人たちの才能は、決して特別な人だけのものではありません。ふつうの暮らしの中に、ふとした瞬間に、誰かの“らしさ”が光る場面があります。

その光をちゃんと見つけて、「いいね」と伝えてくれる人たちがいて、受け入れてくれる地域があって、少しずつ輪が広がっていく――。

小田原の海と山に囲まれたこの町で、そんなやさしい循環が、静かに、でも確実に育っています。

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